生きるということ

僕は2015年のほとんどをフィリピンで過ごしました。特にこれと言ってフィリピンを選んだ理由は無く、なんとなくそれこそノリに近い状態で行きました。

海外に住むという経験は初めてだったので非常に収穫の多い長い一年でした。僕の中では2015年は本当は5年間くらいあったんじゃないかと思うほど様々なことが起こりました。-様々な- というはもちろん良いことと悪いことがあったという意味です。半年ほど前に強盗に遭いホールドアップされたこともそうですが、死というものがとなり町の市長選挙のような自分には全く関係のないものという考えから、常に僕の足元に転がっている身近なものへと変貌しました。そしてそこで出会った何人かの人に君は虚像の中で生きていると言われました。僕はこの言葉に非常に衝撃を受けました。何か背中にあった世界中の鋼鉄を集めたように重い荷物が取れたような気がした分、心をもぎ取られてしまったような感覚を全身に感じました。そこからは一文字も文章を打てずサイトも更新できず何の発言もできず感情も持てずに涙ばかりが出てきました。トムヨークのカーマポリスを引用するならば For a minutes there, I lost myself のような状態でした。まるで今まで誰も触ることの出来なかった僕の心の中枢にある崩れやすいトランプのピラミットを、いとも簡単に崩されたような気持ちでした。

振り返るとそう言われるようになった始まりはおそらくベジタリアンの記事でした。僕がベジタリアンになろうという記事を書き、自分がベジタリアンであるという風に書きました。しかし僕は欧米のベジタリアンの概念を取り入れているので時たま肉も摂取します。欧米ではベジタリアンは月に一回程度は焼き肉などに行き体調を整える人が多いのですが、日本人のイメージするベジタリアンはイスラム教のようなストイックで厳格なものという考えです。欧米人に聞くとファッションの一部としてのイメージでベジタリアンを実行している人が多いです。この事実はさほど認知されていませんから、日本人はこのギャップをどんどん突いていきます。噂は広まり知らぬ間に不信感を抱かれます。先に述べたとおりベジタリアンというのは思考であってリアルではありあせん。殺生を哀れみ、その問題を定義するアーティストです。私は今の日本が抱える問題点の定義としてベジタリアンの概念を記述しましたが、上手く理解してもらえませんでした。僕はこのパラドックスと問題を解消する方法として、また問題提起として完全菜食主義に転向します。時たま摂取していた肉や魚も完全に排除してみたいと思います。そこでまた新たな発見があるかもしれません。

それと同じように今持っているモノが若干このサイトと違うという現象も起きています。これは僕自身が強盗に遭い、全てを盗まれてしまったことも関係していますが、持ち物リストが現実と同じようにするには盗まれた時点で記事をすべて消さなくてはいけないのであえて残しています。そこはどうかご容赦いただきたい。また金銭的な面でこれを買うと決めていてもまだ買えていないものはその選考過程を詳細に記述して紹介しています。基本的に僕のサイトはアートだと考えて記事を読み進めていってください。

そして昨今のミニマリストに関する一連のトピックも世の中では顰蹙を買う事が多いかと思います。僕も散々モノが多いだとか整理整頓が出来ないだとか片付けられないとか言われましたが、ミニマリストになった多くの人間は僕のような状態で散々悩んだ結果、自分なりに出した結論がミニマリスト、ミニマリズムなのではないでしょうか。その彼らをミニマリストじゃないとかマキシマリストだとか比喩することは発言者が思う重さよりも遥かに重い文鎮を心に投げつけていることになりかねません。これは僕がいろいろなミニマリストと腹を割って話した結果わかったことです。言葉はナイフのように人の心を切り裂きLINEでは抜身のナイフ言葉で会話が行われています。出身国が違うからと問答無用に移民を差別するのと同じように同性愛者を差別するのと同じように彼らは羨ましいという感情を批判に転換します。

僕の場合小さい頃からアートのなかでなんとか生きていました。僕からアートもしくは美を抜くとそこには死しか残りません。これは現実的な意味での肉体の死と精神的な面での心の死、両方を意味します。僕の考えではおそらく人として一番やってはいけない行いとは人を批判しそれを甘受し、その中の放棄した状態で生き続けることなのではないでしょうか。他者のノイズに消されるなとは良く言いますが、そこで諦めて周りに流されてしまったときに、人間は心地よさを感じ行動ができなくなります。それでいいじゃんという真であるかのようなニセの幸福感に入り浸ってしまいます。もちろん、これを脱却できる人は世の中にそう多くは存在しません。これが格差の根源であり今の世界、社会の現状だと思っています。これから先このような現状はどんどんと広がっていき、人々をどんどんと蝕んでいきます。その中から人々はどんどん抜けだせなくなっていきます。今の日本の状態がまさにこれだと思っています。感受性が無くなり人間的に薄くなりアーティスティックな要素が消滅しているということです。人間も街も仕事も家も。これを解決するひとつの方法がミニマリズム、ミニマリストという考えなのではないでしょうか。ヨーロッパ人の生活が魅力的に見えるのもこのためだと思います。これを伝えていくことが唯一残された僕の「生きるということ」であり、このサイトで伝えていきたいことです。

21 thoughts on “生きるということ

  • 伊藤さん

    まったくその通りだとぼくもおもいます。なぜかひとはひとと違うことがあるとそれを批判することから考えます。動物的本能なのかもしれませんね。ぼくもそういうところがありました。ミニマリズムにふれてから180度かわりました。心がかわると見える世界もかわります。ぜひたくさんの人たちにミニマリズムの素晴らしさを伝えていきたいですね。ぼくはいま伊藤さんのサイトと佐々木さん沼畑さんのサイトが更新されるのが楽しみでたまりません。たくさんたくさん参考にしています。ぼく自身も触発されてサイトを立ち上げました。ぼくはぼくで可能な限り伝えていきます。伊藤さん是非みんなのためにもずっと進めていってください。日々応援しています。次の更新もいまから楽しみです。

    • 遠藤さん

      前にも感謝のコメントをしてくださいましたよね、覚えています。いつも見ていただいているようで、本当にありがとうございます。

      ”心が変わると世界が変わる” 本当にそのとおりだと思います。
      僕が発信していることが、正しいのか間違っているのかなんてわかりません。でも大切なのって正しいとか正しくないとかじゃなくて、あの人の意見を聞いてみたいって思われるようになることなのかなって最近は感じています。
      熟考しないと気がすまない人間なのでコメントの返信も遅いですし更新も遅いですが、諦めるということだけはしないと思うので駅で珍しい車両を撮影するために待っているカメラマンのように待っていて下さい。そこに必ず登場します。

  • 初めまして。
    南米旅行に行くため、情報収集目的でHPを渡り歩いていたら、何故か辿り着きました。

    最初過去の記事を読み進めている内は、良くあるアフィリエイトブログなのかと思いましたが、全て読み終えると、どうやら本当に良い物をお勧めしているようですね。

    これからも記事の更新楽しみにしています。そして、伊藤さんのように、質の良い物を、長く使うライフスタイルに近付けて行きます。
    tuft24の歯ブラシ位しか僕の所持品で被っているものが有りませんでした…笑

    • はじめまして。

      それはそれはまた不思議な巡り合わせですね。南米、気をつけてくださいね。もう旅立ってるでしょうか。
      質の良い物を使うことは実に理にかなっていると思います。自分の払った金銭が正しく細部に行き渡って循環します。

      言うほど簡単ではないですが、まずは心がけることが一番重要なのかなと思います。

      これからも是非見てくださいね。会えたら南米で会いましょう。

      • 南米は2月の中旬です。

        今日シュマーグと、snow peak 450とice breakerのパンツ購入しました。影響されまくっていますね。笑
        準備は完了し、残すはパッキングだけになりました。楽しみで仕方がありません。

        価格だけ見ると、高い買い物ですが、コストパフォーマンスは素晴らしいです。
        大切に長く使用していきます。

        あれ、今はフィリピンでなく南米にいるんでしょうか?

        • それはそれはありがたい。

          いいものを長く使うとよく言いますしね。
          いえいえ、今はフィリピンです。でも人生何が起こるかわかりませんので、もしかしたらその頃は南米にいるかも・・・?

          • そういえば、もっと前に勉強用にMORDEXも即買いしていた事を書き忘れておりました…笑

            そうですね、Koutaさんのことですから、ありえなくもないですね…

  • 私がかつてしたことのない多くの体験をし、去来する様々にまっすぐに向き合う伊藤さんをとても羨ましく思います。色々な声があるかとおもいます。また、その声に揺れることもあるかとおもいます。それでもどんどんご自身の感じた事や想ったことをたくさん発信していただけると嬉しいです。いつも伊藤さんの記事を本当に楽しみにしています。

    • 羨ましいっていうほど羨ましいものでも無いですよ笑。チャレンジしてみれば誰にでもチャンスは訪れると思います。

      体験というのはときにあり得ないことが起こりますし、悲惨なことも起こります。でもその結果は大概プラスに働くことが多いと思います。

      これからも発信していきますので、たまに更新されているかチェックしてみてください。返信も遅いですが必ずしますので、気軽に書いて下さいね。

  • 久しぶりの更新を楽しみにしていました!自分なりの生き方を持っているというのは、すごく羨ましいし、カッコいいですね!
    俺もアーティスティックな生き方を目指して、日々を生きていきたい!いつかコウタさんに会って語り合うことが俺の今の目標の一つです。そのためにアーティスティックに生きていきます!

    • 熱いコメントをありがとうございます!

      僕は架空の人間ではないので、日本にいる時なら会えますよ!笑
      ぜひその目標、今年中に叶えましょう。

  • 初めまして
    パソコンを開く日は必ず伊藤さんのサイトをのぞかせてもらっています。
    今日は更新を発見して嬉しいです。

    ことばが曲解されるとしんどいですね。歳を重ねた私も慣れません。
    でも思いを発表することはどうか続けていただきたい。
    伊藤さんとの「違い」こそが私の醍醐味だからです。

    • 日々の日課になっているなんて、そんなに名誉なことはありません。ありがとうございます。

      おそらく谷底に突き落とされても井戸の底に投げ込まれても這い上がって発信し続けますので、日々の楽しみの一つになれるように書き続けていこうと思います。

  • 伊藤さんの気持ちの込もった文章が、とても好きなんです!
    いつも楽しみに見ています。

    • ありがとうございます。励ましの言葉ばかりで涙がでるほど嬉しいです。これからも発信していきます!

  • いいと思う。それでいいよ。そのままでいい。
    勇気ある表明に心打たれました。

    • かなり悩みましたが、結果的にプラスになったのかな、なんて思います。ありがとうございます。

  • 更新を見つけて嬉しいです。
    水底に横たわる感覚を大切にされているように思います。
    水底に横たわっていると、周りのことが良く見えるでしょうね。
    小さくファイトを送ります。

    • 僕のパースペクティブは水底にしかないし、そこ以外に移らないと思います。そしてその映像を発信していくことが僕のすべきことだと思います。

      小さいファイト、受け取りました。

  • 初めてコメントさせて頂きます。
    makiと申します。

    今回の記事の内容を拝見し、過去にイラクで拘束された高遠菜穂子さんのことを思い出しました。

    高遠さんの行いは世界では高く評価され、日本国内では過剰なまでのバッシングを受けたと記憶しています。
    彼女はそのバッシングで、鬱状態になって苦しまれたようです。

    言葉ひとつで人を深く傷つけてしまうので、言葉の選択には相手の立場で考える慎重さが必要ですよね。

    日本では伊藤さんのようにグローバルな視点で、物事を考える人はまだまだ少ないように感じています。

    アフリカなどの遠い国の問題と、日本人の消費スタイルが結びついていると考えたり、公平な税制の在り方などを真剣に提起すると、変わり者扱いされることがほとんどですから。
    伊藤さんは日本人には稀少な、心に翼が生えている人だから、批判的なことを言ってくる人も、本当は気になってしょうがない存在なのではないかと思います。

    もちろん自分と違う価値観を認めない人もいて、それが紛争や戦争に繋がることは残念ながらありますが・・・
    でも根底には、みんな自由な翼への憧れがあるんじゃないかなと思うので、ありのままの伊藤さんで、伸びやかに活動されることを応援していきたいと思います。

    私は傍観者ではなく、参加者でありたいので、日本で出来ることがあれば、ぜひ教えて下さいね。

    • makiさん、美しいコメントありがとうございます。

      僕は今も海外に住んでいますが、たとえ海外に住んでいたとしても日本人は日本人で固まるし、日本人同士で仕事をします。そして日本人に批判されます。残念がら今の僕もそのひとりです。それほど日本というものは特殊な形態のものなのかなとすごく感じます。どんなに逃げても、いつまでたっても、たとえどこに行ったとしてもついてくる影のような。そんな印象を受けます。

      僕には絶対的なプライドがあるし、一生変えるつもりもありません。変わるときは死ぬときなのかなと感じています。

      応援していただいてありがとうございます。伸びやかに活動していきます。

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